2026年6月17日 (水)
医学トリビア研究所Medical Trivia Lab
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健康・生活習慣

職場のスプーン、5か月で80%が消えた!?

職場の共用ティールームに置いたティースプーンが、5か月で80%も姿を消した――豪研究所のユーモラスな観察研究。共用物はなぜ消えるのか、その謎に番号付きスプーンで迫った一本を紹介します。

職場のスプーン、5か月で80%が消えた!?
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職場の共用ティールームに置いたティースプーンが、5か月で80%も姿を消した――豪研究所のユーモラスな観察研究。共用物はなぜ消えるのか、その謎に番号付きスプーンで迫った一本を紹介します。

① 気づけば、スプーンがない

会社の給湯室。コーヒーをいれようと引き出しを開けると、あんなにあったはずのティースプーンが見当たらない。誰が割ったわけでも、捨てたわけでもない。なのに、いつのまにか数が減っている――。

この「あるある」を、本気で(でも楽しげに)調べた研究があります。オーストラリアの研究所で行われた、その名も「消えるスプーン事件」の追跡調査です。

② なぜ消える? 著者たちのユーモラスな仮説

論文の著者たちは、スプーン消失の理由をまじめくさった顔で考察しています。ひとつは「共有地の悲劇」。みんなのものは誰のものでもない、だから無頓着に持ち出され、補充は誰もしない――という有名な経済学の話です。

もうひとつは、もっとお茶目な仮説。スプーンたちが過酷な労働環境に耐えかね、より良い暮らしを求めて「ひそかに抵抗運動を起こし、脱走している」のではないか、というものです。もちろん冗談ですが、机の奥から大量のスプーンが発掘される経験がある人なら、思わずニヤリとしてしまうはず。

③ 何がわかったか

観察の結果は、あなたの実感を見事に裏づけるものでした。

  • 5か月間で、70本中56本(80%)のスプーンが消失
  • スプーンの「半減期」はわずか81日(半分が消えるまでの日数)
  • 共用ティールームのスプーンの半減期は42日と、特定の研究室のもの(77日)より明らかに短い
  • 高価なスプーンも安いスプーンも、消えるペースに差はなかった

つまり「値段の高いものなら大事にされる」という期待は、もろくも崩れたわけです。共用スペースに置いた瞬間、スプーンの運命はほぼ決まっていた、と言ってもいいかもしれません。

④ どうやって調べたか

方法はいたってシンプル、それでいて律儀です。研究者たちは70本のティースプーンを用意し、それぞれに気づかれないよう番号を振りました。そして約140人が働く研究所のあちこちのティールームに配置し、毎週、生存確認を続けたのです。

スパイ映画さながらの追跡調査の末、彼らは試算もしています。このペースで消え続けるなら、所内に70本を保つには年に約250本を買い足さねばならない、と。スプーン補充のためだけに、それなりの予算が飛んでいく計算です。

⑤ ただし、冷静に

ここで大事な注意を。この論文は、医学誌『BMJ』が毎年クリスマスに発行するユーモア特集号(クリスマス号)に載ったものです。重い病気の治療や健康法を論じた研究ではなく、あくまで「研究の作法でジョークを科学する」企画。

ですから数字をそのまま深刻に受け取る必要はありませんし、「スプーンが脱走する」は当然たとえ話です。あなたの会社のスプーンが本当に81日で半減するかどうかは、職場によってまちまちでしょう。

⑥ それでも面白い、そして少しの教訓

笑い話で終わらせてしまうにはもったいない、ささやかな教訓もあります。共用物――スプーンに限らず、ハサミでも傘でも充電ケーブルでも――は、誰の責任でもないからこそ、いつのまにか消えていく。これは多くの職場で起きているリアルです。

だからこそ「みんなのもの」には、ゆるくでも管理する人や仕組みがあると長持ちする。次にあなたが給湯室でスプーンを探してイライラしたら、この研究をちょっと思い出してみてください。あなたの職場のスプーンも、いままさに半減期のカウントダウンの途中にいるのかもしれません。


出典:Lim MSC, Hellard ME, Aitken CK. "The case of the disappearing teaspoons: longitudinal cohort study of the displacement of teaspoons in an Australian research institute." BMJ. 2005;331(7531):1498-500. DOI: 10.1136/bmj.331.7531.1498(PubMedより取得)

※この記事は研究の紹介です。診断・治療を目的としたものではありません。

SOURCE / 出典・論文情報
Lim MSC, Hellard ME, Aitken CK. The case of the disappearing teaspoons. BMJ. 2005;331(7531):1498-500. / DOI: 10.1136/bmj.331.7531.1498
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