床から手をつかずに立てる? 1点上がるごとに死亡リスクが21%低下した「座って立つテスト」
床に座って手やひざをつかずに立てますか? 2002人を追跡した研究で、この「座って立つテスト」が1点上がるごとに死亡リスクが21%下がっていました。
床から、手をつかずに立てますか?
特別な器具も病院も要りません。床にあぐらをかいて座り、そこから「手やひざを床につかずに」立ち上がってみてください。これだけで、あなたの将来の健康を映す鏡になるかもしれない——そんな研究があります。
ブラジルの研究チームが2002人の中高年を追跡したところ、この「座って立つテスト」のスコアが1点上がるごとに、追跡期間中の死亡リスクが約21%低かったことがわかりました。点数が低い人ほど亡くなる割合が高く、最低点グループは最高点グループの5倍以上の差がついていたのです。
もちろん「立てれば長生きできる」と単純に言える話ではありません。でも、自宅で30秒あれば試せる手軽さと、その背後にある体のメッセージは、知っておく価値があります。
「座って立つテスト」とは何か
このテストは英語で Sitting-Rising Test(SRT、座位‐起立テスト) と呼ばれます。やり方はシンプルです。
床に座る動作と、床から立ち上がる動作を、それぞれ5点満点で採点します。最初の持ち点は5点。手・ひざ・前腕・体の側面などで体を支えたり、バランスを崩したりするたびに、1回につき1点ずつ引かれていきます。座る動作と立つ動作の点を合計するので、0〜10点の範囲でスコアがつきます。
なぜこんな単純な動作が健康と関わるのでしょうか。床から手をつかずに立つには、脚やお尻の筋力、関節の柔らかさ、そして体を支えるバランス感覚が同時に必要です。研究者たちは、心肺の強さ(持久力)が寿命と関係することは以前から知られている一方で、こうした筋力・柔軟性といった「筋骨格系の体力」と寿命の関係を示すデータは乏しい点に注目しました。SRTは、その筋骨格系の体力をまとめて簡単に測れる物差しになるのではないか、と考えたのです。
何がわかったか
研究で示された主な数字を整理します。
- 対象は 51〜80歳の成人2002人(うち男性68%)。
- 追跡期間は中央値6.3年で、その間に159人(7.9%)が亡くなった。
- SRTのスコアが1点上がるごとに、生存率が約21%改善した。
- スコアを4グループに分けると、点数が低いグループほど死亡リスクが高く、最低群(0〜3点)は最高群(8〜10点)の5.44倍の死亡リスクだった(年齢・性別・BMIで調整後)。
- 中間のグループも、低いほうから順に3.44倍、1.84倍と、きれいに段階的な差がついていた。
点数が下がるにつれて、まるで階段のようにリスクが上がっていく——この一貫した傾向こそが、研究者たちが「単なる偶然ではなさそうだ」と考えた理由でした。
どう調べたのか
この研究は、すでにテストを受けていた人々のデータをさかのぼって調べる後ろ向きコホート研究という方法で行われました。51〜80歳の2002人にSRTを受けてもらい、その後どうなったかを中央値6.3年にわたって追跡。誰がどのスコアだったかと、その後の生死を突き合わせた、というわけです。
人数が2000人を超え、追跡も数年に及ぶため、「たまたま」では説明しにくい規模ではあります。研究チームは、SRTは器具がいらず安全で簡単なので、一般的な健康診断に取り入れれば、入院していない普通の大人の機能的な体力を知る手がかりになる、と結論づけています。
ただし、冷静に受け止めたい
ここはとても大切な部分です。この研究は、いくつかの限界を抱えています。
まず、過去のデータをさかのぼる後ろ向き研究であり、調整できた交絡要因は年齢・性別・BMIのみでした。喫煙や持病、運動習慣など、寿命を左右する他の要素は十分に考慮されていません。点数が低い人は、そもそも何らかの理由で体調が良くなかった可能性があります。つまり「立てないから早く亡くなる」のか「不健康だから立てない」のか、この研究だけでは区別がつきません。「床から立てれば長生きできる」とは断定できないのです。
そしてもう一つ、安全面の注意です。このテストは転倒のリスクを伴います。高齢の方、ひざや腰に不安のある方、バランスに自信のない方は、無理に試さないでください。試す場合も、周りに物がない場所で、誰かに付き添ってもらうなど、安全を最優先にしてください。スコアを上げること自体が目的ではありません。
それでも、面白い
因果関係が証明されたわけではない。それでもこの研究が多くの人を惹きつけるのは、「未来の健康」という抽象的なものを、たった一つの動作で実感させてくれるからでしょう。
床から手をつかずに立つという何気ない動作の中に、脚の筋力も、関節の柔らかさも、バランスも、日頃どれだけ体を動かしているかも、ぜんぶ詰まっています。点数が低かったとしても落ち込む必要はなく、むしろ「今の自分の体と向き合うきっかけ」と捉えるほうが健全です。スクワットやストレッチ、散歩——できることから少しずつ。体は、年齢に関係なく応えてくれます。
あなたは今、10点満点中、何点で立てるでしょうか。
出典: Brito LBB, Ricardo DR, Araújo DSMS, Ramos PS, Myers J, Araújo CGS. "Ability to sit and rise from the floor as a predictor of all-cause mortality." *European Journal of Preventive Cardiology* 2014;21(7):892-898.(PubMedより/DOI)
※本記事は研究内容の紹介であり、医療上の助言ではありません。体調や運動についての判断は、医師など専門家にご相談ください。