【W杯】早生まれ有利(相対年齢効果)は、女子より男子で強い?
ドイツのトップ選手1763人を分析。年度はじめ生まれが過剰になる「相対年齢効果」は男女とも有意だが、効果量は男子でより大きかった。
ワールドカップの季節になると、決まって話題になる小ネタがあります。「一流選手は早生まれ(年度はじめ生まれ)が多い」というものです。サッカーに限らず、子どものスポーツで「同学年なら、生まれが早いほうが体が大きく有利」というのは直感的にわかります。では、その有利さは男女で同じなのでしょうか。ドイツのトップ選手を性別ごとに調べた研究が、興味深い差を報告しています。
なぜ「早生まれ」が有利になるのか
子どものスポーツチームは、誕生日でなく「学年(年齢区分)」で分けられます。同じ区分の中でも、区分の頭で生まれた子と終わりで生まれた子では、最大で約1歳の差があります。成長期の1歳差は、身長・体重・スピードに大きく効きます。すると指導者は無意識に「体が大きく、いまうまい子」を選びがちになり、上のレベルへ引き上げられていく――この積み重なりが「相対年齢効果(Relative Age Effect)」です。重要なのは、これが「才能」ではなく「生まれ月という偶然」で起きている点。そして効果の出かたは、競争がどれだけ激しいか、選手の選抜がどれだけ厳しいかで変わると考えられています。競争が激しいほど「いま少しでも大きい子」が選ばれやすく、効果が強く出る、という理屈です。
何がわかったか
ドイツのトップ選手を性別に分けて誕生月の偏りを調べた結果です。
- 相対年齢効果は男女とも統計的に有意だった。
- ただし効果の大きさ(効果量)は、女子が小さめ、男子のほうが大きい(女子 w=0.16/男子 w=0.23)。
- どちらも共通して、年度のはじめに生まれた選手が過剰に多かった。
- 男子の最年少年代(U19代表)では効果量が0.52と特に大きく、若い世代ほど偏りが目立った。
つまり「早生まれ有利」は男女どちらにも存在するけれど、その傾向は男子でより強く出ていた、ということです。
どう調べたか
研究チームは、2019/20シーズンのドイツ1部・2部リーグの選手と、A代表からU19までの代表選手、あわせて1763人(女子680人・男子1083人)の誕生月を集めました。そして「もし生まれ月に偏りがなければこうなるはず」という分布(期待値)と、実際の分布をカイ二乗検定で比べ、ズレの大きさを効果量とオッズ比で表しました。リーグのレベル別にも分け、1部・2部・代表それぞれで偏りを確認しています。男子では1部・2部とも有意な偏りがあり、女子は2部でより強く出るなど、レベルによっても差が見られました。
ただし、冷静に
派手な見出しになりそうな話ですが、結びつきは控えめに読む必要があります。第一に、観察された効果量は小〜中程度。「早生まれなら確実に有利」と言えるほど大きな差ではありません。第二に、これは誕生月の分布を後から観察した分析であり、「早生まれだから選ばれた」という因果を直接証明したものではありません。なぜ男女で差が出たのかも、この研究だけで断定はできません。女子と男子では競技人口や競争の激しさ、育成・選抜の構造そのものが違い、そうした背景の差が効果量の違いに影響している可能性があります。性別そのものより、選抜のされ方の違いが効いているのかもしれません。
それでも、この研究が示すのは
生まれ月という、本人にはどうにもできない偶然が、トップレベルの誕生月分布にまで影を落としている――それを男女で比べて数字で示したことに意味があります。とくに男子で偏りが強く、若い世代ほど目立つという結果は、育成の早い段階で「いま体が大きい子」に機会が偏り、遅生まれの有望株が途中で取りこぼされている可能性を示します。それは「埋もれた才能」の損失でもあります。次にW杯を見るとき、ピッチに立つ選手の生まれ月を眺めてみてください。彼らの背後には、生まれ月で選ばれなかった、もう一人の才能がいるのかもしれません。
出典: Götze M & Hoppe MW. Relative Age Effect in Elite German Soccer: Influence of Gender and Competition Level. *Front Psychol*. 2021. DOI(PubMedより取得)
※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。