【W杯】赤いユニフォームのチームは勝ちやすい?英サッカー55年の解析
1947年以降のイングランドのサッカー55年分を解析。赤いユニフォームのチームはホームで最も好成績だった。色か実力か、冷静に見ると面白い。
「赤は勝負の色」とよく言われます。闘牛の赤、勝負下着の赤、企業ロゴの赤。スポーツの世界でも、なんとなく赤いユニフォームは強そうに見えませんか。リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル——イングランドの名門には、確かに赤が多い気がします。
これはただの思い込みなのでしょうか。それとも、赤いユニフォームには本当に勝率を上げる「何か」があるのでしょうか。イギリスの研究チームが、イングランドのサッカー55年分のデータをまるごと解析して、この素朴な疑問に挑みました。
なぜ「赤」が話題になるのか
赤が注目されるのには理由があります。動物の世界では、赤やオレンジの体色は強さや攻撃性のサインとして使われることがあり、対戦相手を威圧する効果があると考えられています。人間にも同じような無意識の反応が残っているのではないか、というわけです。
格闘技やレスリングなど、一対一で戦う「コンバット系」の競技では、赤を着た側の勝率が高いという報告がそれまでにありました。赤を着ると自分の自信や攻撃性が増す、あるいは相手や審判が赤を強そうだと感じる——こうした心理の影響が疑われていたのです。ただ、それがサッカーのような「チームで協力して戦う団体競技」にも当てはまるのかは、はっきりしていませんでした。
何がわかったのか
研究チームがイングランドのリーグ成績を調べたところ、次のような結果が出ました。
- すべてのリーグ区分を通じて、赤いユニフォームのチームはホームでの成績が最も良かった
- ホームでの「獲得可能な勝点のうち実際に取れた割合(勝点率)」と「平均順位」のどちらでも、赤が他の色を有意に上回った
- 単に「色つき vs 白」という差ではなかった——白いチームは黄色系のチームより成績が良く、赤はさらにその上
- 同じ8都市の中で赤・非赤のチームを比べた解析でも、55年を通じて赤のチームが有意に好成績
- 一方、アウェーの試合では色による差は見られなかった(アウェーでは本来の「ホームの色」を着ないことが多いため)
ホームでこそ赤が効く、というのが大きなポイントです。
どうやって調べたのか
この研究のすごみは、その規模にあります。1947年以降、イングランドのサッカーで赤いユニフォームのチームは、赤を着るクラブの割合から予想されるよりも多く優勝してきました。研究チームはこの偶然のような事実を出発点に、色ごとにリーグ内の相対順位を比較しました。
さらに念入りなのが「マッチドペア分析」です。同じ都市にある赤チームと非赤チームをペアにして、55年という長期にわたって成績を突き合わせました。同じ街なら経済規模やファン層などの条件が近いため、色以外の要因をできるだけそろえて比べられる、という狙いです。
ただし、冷静に見ると
ここで大事なのは、これが「相関」であって「因果」ではないということです。
赤いユニフォームだから強くなったのか、それとももともと強豪だったクラブがたまたま赤を選んでいただけなのか——このデータだけでは断定できません。歴史ある名門が赤を採用し、その伝統と資金力で勝ち続けてきた、という逆の説明も十分に成り立ちます。
しかも効果が見られたのはホームの試合に限られ、アウェーでは差がありませんでした。もし赤そのものに普遍的な力があるなら、アウェーでも効きそうなものです。「赤を着れば勝てる」と単純に結論づけるのは早すぎます。
それでも面白いのは
それでも、この研究が魅力的なのは、55年・多数のクラブという膨大なデータでも「赤が一歩リード」という傾向が消えなかったことです。著者らは、闘牛場やリングだけでなく団体競技でも赤が好成績と結びつくことを確認し、その背後にあるメカニズムをさらに研究する価値があると述べています。
W杯のテレビ中継で、赤いユニフォームのチームが映ったとき。それを「強そうだ」と感じる自分の感覚は、もしかすると人類が長く引きずってきた古い反応なのかもしれません。勝敗を決めるのは実力ですが、ほんの少しだけ「色の物語」を思い出すと、観戦がもっと楽しくなりそうです。
出典: Attrill MJ, Gresty KA, Hill RA, Barton RA. "Red shirt colour is associated with long-term team success in English football." *Journal of Sports Sciences* 2008;26(6):577-82. DOI(PubMedより取得)
※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。