2026年6月17日 (水)
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社会・スポーツ

【W杯】1〜3月生まれはプロサッカー選手になりやすい?相対年齢効果

ベルギーの選手2757人を解析すると、新年代区分の前半に生まれた選手が過剰に多かった。数か月の発育差が選抜を左右する「相対年齢効果」の話。

【W杯】1〜3月生まれはプロサッカー選手になりやすい?相対年齢効果

「同じ学年でも、4月生まれと3月生まれでは体格がぜんぜん違う」。子どもの習い事やスポーツで、そんな話を聞いたことはないでしょうか。生まれた月がたった数か月ちがうだけ。それなのに、走る速さも体の大きさも、けっこう差がついてしまう。

実はこの「数か月のズレ」が、プロのサッカー選手の世界にまで影を落としているかもしれない――。今回はベルギーの選手 2757人 の誕生月を調べた研究を紹介します。

相対年齢効果とは

サッカーの育成年代では、選手を「年代区分」で区切ります。たとえば1月1日を区切りにすると、同じグループの中に1月生まれから12月生まれまでが混ざります。

子どものうちは、わずか数か月の差でも体の発育に大きな違いが出ます。区切りの直後(区分の前半)に生まれた子は、同じグループの中で相対的に年上。背が高く、力も強く、走るのも速い。すると「うまい子」に見えやすく、コーチに選ばれ、良いチームや多くの出場機会を得ます。

この、生まれ月のちがいが選抜で有利・不利を生む現象を 相対年齢効果(Relative Age Effect) と呼びます。本当の才能ではなく、ただ「区切りのどこに生まれたか」が結果を左右してしまうのです。

何がわかったか

PubMedに収載された研究によると、主な発見は次の通りです。

  • 新しい年代区分の 前半(1〜3月) に生まれた選手が、区分の後半(10〜12月)の選手にくらべて 過剰に多かった
  • 区分の前半に生まれた選手は、試合への 出場機会がより多かった
  • ただし、選抜された回数や出場時間の平均では、区分の前半生まれと後半生まれで 差はなかった
  • 区切りの開始日を変えて比べると、偏りの中心もそれに合わせてズレた

つまり「誕生月の分布」には明らかな偏りがある一方で、出場の中身(回数や時間)まで見ると、話はそう単純ではなかったということです。

どう調べたか

研究チームは、ベルギーの準プロ・アマチュアの成人選手 2757人 の誕生日分布を長期的に追跡しました。試合の記録はベルギーサッカー協会の公式統計を利用しています。

実際に観察された誕生日の分布が、偶然そうなる「期待される分布」とどれだけ食い違うかを統計的に検定し、ズレの大きさを評価しました。さらに 2138人 をさかのぼって調べ、試合への出場回数やプレー時間といった「実際に試合に関わった度合い」を、相対年齢効果と照らし合わせています。

誕生月の数だけでなく、その後どれだけ試合に出られたかという「中身」まで踏み込んだのが、この研究の特徴です。

ただし、冷静に

ここで大切なのは、これが 誕生日分布の観察的な解析 だという点です。誰かをわざと有利・不利にした実験ではなく、すでに存在する選手たちの記録を後から見ています。

そして注目すべきは、出場回数や出場時間の平均では区分の前半生まれと後半生まれで差がなかったこと。誕生月の偏りと、試合関連の指標は「似てはいるが、完全には一致しない」結果でした。

何より、これは「早生まれは才能がない」という話では決してありません。区分の前半生まれが多いのは、その人たちが優れているからではなく、区切りの設定そのものが偏りを生んでいる から。生まれ月は本人が選べるものではないのです。

それでも、この研究が示すもの

相対年齢効果が教えてくれるのは、「私たちの選抜のしくみは、才能とは無関係な要素で人を選り分けているかもしれない」という不都合な可能性です。

区分の後半に生まれただけで早い段階でふるい落とされる子の中に、本来なら伸びたはずの才能が眠っているかもしれません。発育の早い遅いは一時的なものなのに、その一瞬の差で道が閉ざされてしまう。

ワールドカップの華やかな舞台の裏側で、見逃されてきた才能がどれだけあったのか。誕生月という小さな偶然に目を向けることは、より公平な育成のしくみを考える、最初の一歩になるはずです。


出典: Vaeyens R, Philippaerts RM, Malina RM. *The relative age effect in soccer: a match-related perspective.* J Sports Sci. 2005;23(7):747-756. (PubMedより取得 / DOI

※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。

SOURCE / 出典・論文情報
Vaeyens R, Philippaerts RM, Malina RM. The relative age effect in soccer: a match-related perspective. J Sports Sci. 2005;23(7):747-756. doi:10.1080/02640410400022052 / DOI: 10.1080/02640410400022052
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