ハグが多い人ほど風邪に強い:サポートの守る力の32%をハグが説明
周りに支えられている人ほど風邪に強い。その守る力のうち約32%は「ハグの多さ」で説明できた。実際にウイルスを浴びせた珍しい実験から。
「支えてくれる人がいると、なぜか体調を崩しにくい」——そんな実感を、研究者が大胆な実験で確かめました。健康な大人を集めて生活を記録し、そのあとで本当に風邪のウイルスを浴びせる。すると、周りに支えられていると感じている人ほど感染しにくく、その守る力のかなりの部分を、ある日常のしぐさが説明していました。それが「ハグ」です。心の安心が、どうやら体のバリアにまでつながっているらしいのです。
なぜ「ハグ」が体を守るのか
ストレスは免疫の働きを乱し、ウイルスへの抵抗力を下げると考えられています。気の合わない相手とのいさかいや人間関係の摩擦は、その代表的なストレス源です。
ここで注目されるのが、人との温かい接触です。ハグのような身体的なふれあいは、不安や緊張をやわらげ、ストレスへの体の過剰な反応をしずめると考えられています。仮説のひとつとして語られるのが、安心や絆に関わるとされるホルモン「オキシトシン」の働きです。誰かに抱きしめられることが「あなたは支えられている」という確かなサインになり、ストレスの嵐から体をかばってくれる——研究チームはそんな道筋を探ろうとしました。
何がわかったか
研究の主な結果は、次のとおりです(出典の数値より)。
- 対象は健康な成人404人。
- 14日間にわたり、毎晩の電話で「その日にあった対人ストレス(いさかい)」と「ハグを受けたか」を記録した。
- 周りの支え(知覚されたサポート)は、いさかいが増えたときの感染リスクの上昇をやわらげた。
- 同じ守る効果はハグにも見られ、サポートが守る力の約32%をハグが説明した。
- さらに、実際に感染した人の中では、ハグが多い人ほど症状が軽かった。
つまり「支えられている感覚」という心の要素の一部は、ハグという具体的な行動として体に効いていた、という結果です。
どう調べたか——実際にウイルスを投与した珍しい実験
この研究のいちばん大胆なところは、参加者に実際に風邪のウイルスを投与した点です。
まず、参加者は質問票で「自分は周りに支えられていると感じるか」を答え、続く14日間、毎晩の電話でその日のいさかいとハグの有無を報告しました。そのうえで、研究施設で風邪を起こすウイルスを鼻から投与され、隔離環境で観察されます。誰が本当に感染したか、症状がどれくらい出たかを、客観的な指標で確かめるためです。
ふだんの観察研究では「風邪をひいた人」を後から数えるしかありませんが、この研究は条件をそろえてウイルスを浴びせることで、「ハグの多さ」と「感染・症状」の関係をより踏み込んで調べられた——そこが珍しく、説得力を生んでいます。
ただし、冷静に
魅力的な結果ですが、受け止め方には注意が必要です。
ハグについて測ったのは「その日にハグを受けたかどうか」という自己申告だけで、ハグの長さや深さ、相手との関係といった「質」までは測れていません。また、浴びせたのはあくまでふつうの風邪のウイルスであり、インフルエンザや重い感染症にそのまま当てはまる保証はありません。
さらに、これは「ハグをすれば風邪が治る・防げる」と因果を断定した研究ではありません。観察された関連であり、ハグそのものではなく、ハグが生まれるような温かい人間関係全体が効いている可能性も十分にあります。ハグは医療やワクチン、手洗いの代わりにはなりません。
それでも、温かいのは
数字を差し引いても、この研究が示すものは温かいものです。誰かに支えられているという感覚は、気休めではなく、ストレスの影響をやわらげる現実的な力を持っているらしい。そしてその一部は、抱きしめるという素朴な行為として、確かに体に届いている可能性がある。
特別なサプリも装置もいりません。家族や友人、パートナーとの何気ないハグが、心だけでなく体のコンディションにもそっと寄り添ってくれるのかもしれない——そう思えるだけで、人とのふれあいが少し愛おしく感じられます。
出典:Cohen S, Janicki-Deverts D, Turner RB, Doyle WJ. *Does Hugging Provide Stress-Buffering Social Support? A Study of Susceptibility to Upper Respiratory Infection and Illness.* Psychol Sci. 2015;26(2):135-147. DOI(PubMedより取得)
※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。