2026年6月17日 (水)
医学トリビア研究所Medical Trivia Lab
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健康・長寿

握力が5kg弱いごとに、総死亡リスクが最大20%高かった

握力が5kg弱くなるごとに総死亡リスクが約16〜20%高い——50万人のUKバイオバンクが示した、握る力と健康の意外な関係を平易に解説します。

握力が5kg弱いごとに、総死亡リスクが最大20%高かった
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握力が5kg弱くなるごとに総死亡リスクが約16〜20%高い——50万人のUKバイオバンクが示した、握る力と健康の意外な関係を平易に解説します。

ペットボトルのフタが、昔より少し固く感じる——。そんな何気ない変化が、実は体全体の健康状態を映す「バロメーター」になっているかもしれません。イギリスの大規模研究を解析したところ、握力が5kg弱くなるごとに、その後の総死亡リスクが約16〜20%高かったことがわかりました。握る力という、誰でも測れるシンプルな指標が、思いのほか多くを物語っていたのです。ただし、これは「握力を鍛えれば長生きできる」という話とは少し違います。順を追って見ていきましょう。

なぜ「握力」が寿命と関係するのか

握力は、手や腕だけの力に見えて、実は全身の筋肉量や体力をかなりよく反映する指標として知られています。特別な装置がなくても、握力計を握るだけで短時間に測れるため、医療や研究の現場で「全身の元気さ」を手軽に推し量るものさしとして使われてきました。

握力が弱いということは、全身の筋肉や体力が落ちているサインであることが多く、それは心臓や血管の健康状態、栄養のとり方、ふだんの活動量とも結びついている可能性があります。つまり握力そのものが死を招くのではなく、握力が「体のさまざまな状態を映す鏡」になっている——そんな見立てです。

何がわかったのか

今回の解析で示された主な数字は次の通りです。

  • 握力が5kg弱くなるごとに、総死亡リスクは約16〜20%高かった(女性で約20%、男性で約16%)。
  • 心血管の病気による死亡リスクは、5kgあたり約19〜22%高かった。
  • がんによる死亡リスクは、種類により約10〜17%高かった。
  • 握力は、年齢・性別・血圧・喫煙などから作る「事務的なリスクスコア」の予測力をわずかに高めた。

ポイントは、これらが「5kgごと」というわかりやすい単位で揃って表れたこと。そして握力という1つの指標を加えるだけで、従来のリスク評価が少し賢くなった、という点です。

どう調べたのか

調査の規模はかなり大きなものでした。研究者たちは、イギリスの大規模医療データベース「UKバイオバンク」に登録された40〜69歳の50万2293人を対象にしています。参加者の握力を測ったうえで、平均約7.1年にわたって追跡し、その間に誰が、どんな原因で亡くなったかを記録しました。

これだけの人数と追跡期間があると、握力と健康の関係を統計的に安定して捉えやすくなります。研究では年齢・性別・喫煙といった他の要因の影響もできるだけ調整したうえで、握力と死亡リスクの関連を見ています。

ただし、冷静に受け止めたい点

ここで大切なのは、この研究が「観察研究」だということです。たくさんの人を観察して関連を見つける手法であり、「握力が弱いから死亡リスクが上がった」という因果関係を証明したものではありません。

握力が低い人の中には、すでに何らかの病気を抱えていたり、もともと体力が落ちていたりする人が含まれている可能性があります。その場合、「弱い握力」は原因というより、すでに進行している不調の「表れ」かもしれません。

したがって、「握力さえ鍛えれば寿命が延びる」と断定することはできません。握る力だけを集中的に強くしても、それで全身の健康が保証されるわけではない、という冷静さは持っておきたいところです。

それでも、知っておくと役立つ理由

とはいえ、この研究が面白いのは、握力という「家庭でも測れるシンプルな指標」に、これだけ多くの健康情報が詰まっている可能性を示した点です。高価な検査をしなくても、自分の体の元気さをざっくり振り返るきっかけになります。

握力が落ちてきたと感じたら、それは「全身の体力や活動量を見直すサインかもしれない」と受け止めるのが、無理のない付き合い方でしょう。フタが開けにくい、荷物が重く感じる——そんな小さな変化を、体からのメッセージとして気にかけてみる。それくらいの距離感が、この研究との健全な向き合い方だと言えそうです。


出典:Celis-Morales et al, *BMJ* 2018(PubMedより/DOI

※本記事は研究結果を平易に紹介するものであり、特定の医療行為を勧めたり、医師の診断・助言に代わったりするものではありません。健康に関する判断は専門家にご相談ください。

SOURCE / 出典・論文情報
Celis-Morales et al, BMJ 2018 / DOI: 10.1136/bmj.k1651
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