早食いの人は糖尿病の発症リスクが約26%高かった
約20万人を3年追跡した日本の研究。年齢や体重を調整しても、早食いだけが糖尿病発症の独立した危険因子で、リスクは約26%高かった。
「ゆっくり食べなさい」——子どものころに一度は言われた言葉かもしれません。マナーの話だと思われがちですが、じつは「食べる速さ」が、糖尿病という生活習慣病のリスクと関係している可能性が、日本の大規模な研究から見えてきました。しかも興味深いことに、間食や朝食抜きといった「何を・いつ食べるか」よりも、「どう食べるか」のほうが効いていたのです。今日はその研究を、できるだけやさしく紹介します。
なぜ「食べる速さ」が血糖に効くのか
食事をすると、消化された糖が血液に流れ込み、血糖値が上がります。早食いをすると、短い時間にどっと糖が押し寄せるため、血糖値が急に跳ね上がる「血糖スパイク」が起きやすいと考えられています。この急上昇を抑えようと、すい臓は大量のインスリンを一気に出さなければなりません。これを何年もくり返すと、すい臓が疲れたり、インスリンが効きにくくなったりして、糖尿病に近づくおそれがあります。
もう一つは満腹感の仕組みです。「お腹がいっぱい」と脳が感じるまでには、食べ始めてからおよそ15〜20分ほどかかるといわれます。早食いだとその信号が間に合わず、満腹を感じる前に食べ過ぎてしまいがちです。実際この研究でも、早食いの人ほど体重が重く、20歳からの体重増加が大きい傾向がありました。
何がわかったか
この研究で示された主なポイントを整理します。
- 糖尿病を発症した人のグループには、早食いの人の割合が、発症しなかったグループより高かった。
- 年齢・体重・体重の変化・血圧・喫煙・飲酒など、複数の要因を調整しても、早食いの人が糖尿病を発症するリスクは約26%高いままだった(オッズ比1.26)。
- 食習慣のなかで独立した危険因子といえたのは早食いだけだった。
- 「夕食後や寝る前の間食」「朝食を抜く」は、それ単独では糖尿病発症の独立した予測因子とは認められなかった。
つまり、いろいろな食習慣を同じ土俵に並べて比べたとき、最後まで“犯人”として残ったのは早食いだった、というわけです。
どう調べたか
この研究のすごみは、その規模にあります。日本全国で行われている健康診断のデータを使い、糖尿病でない197,825人を対象にしました。約20万人です。
参加者には、食べる速さ、夕食後や就寝前の間食、朝食を抜くかどうかといった食習慣をアンケートで答えてもらい、そこから3年間追跡して、新しく糖尿病になった人がどれくらいいたかを調べました。そのうえで統計的な手法を使い、ほかの条件の影響をできるだけ取り除いて、食習慣そのものの効果を見ようとしたのです。これだけの人数を全国規模で追えるのは、日本の健診制度ならではといえます。
ただし、冷静に
魅力的な結果ですが、注意点もあります。
まず、食べる速さは本人の自己申告です。「自分は普通」と思っていても、実際は速い・遅いという食い違いはあり得ます。次に、追跡期間が3年とやや短い点。糖尿病はゆっくり進む病気なので、もっと長く見れば結果が変わる可能性もあります。
そして最も大事なのは、これが観察研究だということ。早食いの人に糖尿病が多かったのは事実でも、「早食いが糖尿病を“引き起こした”」と言い切ることはできません。早食いの人にもともと太りやすさなど別の特徴があり、それが本当の原因だった、という可能性も残ります。研究者自身も、早食いを避けることが予防に役立つかは今後の検討課題だ、と述べています。
それでも、今日からできること
因果は断定できないとはいえ、ゆっくり食べることに大きなデメリットはありません。満腹感が間に合いやすくなり、食べ過ぎを防げるなら、それだけでも価値があります。
おすすめは、シンプルによく噛むこと。一口ごとに箸を置く、最初の数口だけでも回数を数える、会話をはさむ——どれも特別な道具はいりません。「速く食べないと損」という場面は、現代の食卓にはそう多くないはずです。次の食事、いつもより少しだけゆっくり味わってみませんか。
出典: Kudo A, et al. "Fast eating is a strong risk factor for new-onset diabetes among the Japanese general population." *Scientific Reports*, 2019. DOI: 10.1038/s41598-019-44477-9(PubMedより取得)
※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。診断や治療については医療機関にご相談ください。