ウォシュレットの洗浄水に生きた菌、家庭は公共施設の約3倍だった
ウォシュレットの洗浄水に生きた菌がいて、家庭用は公共施設の約3倍。残留塩素が抜けるのが一因。ただし菌=病気ではなく冷静に。
「家のほうが、外より菌が多い」という逆転
外のトイレより、わが家のトイレのほうが安心——そう思っていた人には、少し意外な話かもしれません。温水洗浄便座(ウォシュレット)の洗浄水を調べた研究で、家庭用便座の洗浄水に含まれる生きた菌の数は、公共施設の約3倍だったことがわかりました。
According to PubMed、これは産業医科大学の学術誌に掲載された日本の調査(DOI)によるものです。便利な機能ほど毎日使うもの。だからこそ、その「水」の中身を一度のぞいてみる価値があります。
なぜ「家庭のほう」で菌が増えるのか
ポイントは、水道水に含まれる「残留塩素」です。日本の水道水には、蛇口に届くまで安全を保つために、ごく薄い塩素(消毒成分)が残るよう調整されています。この塩素には、水の中の菌の増殖を抑えるはたらきがあります。
ところがウォシュレットの多くは、内部のタンクに水をためてから温めて使う仕組みです。水がタンクの中でとどまっている間に、残留塩素は少しずつ抜けていきます。塩素という「見張り役」がいなくなった水は、菌にとって居心地のよい場所になります。
公共施設のトイレは利用者が多く、水がどんどん入れ替わるため、塩素が抜けきる前に新しい水が補充されます。一方、家庭は使う回数が限られ、水がタンクに長くとどまりがち。この「水の滞在時間」の差が、家庭のほうで菌が増えやすい一因と考えられます。便利さゆえの、ちょっとした盲点です。
何がわかったか(数字でみる)
調査でわかった主なポイントを整理します。
- 洗浄水の中に、生きた菌(生菌)の存在が確認された
- 家庭用便座の生菌数は、公共施設の約3倍だった
- この差は、タンクに新しい水を足す際の残留塩素(遊離塩素)の量と関係していると考えられる
- 洗浄後のお尻まわり・陰部にも、菌が付着しうることが示された
つまり「洗っているのに、洗浄水そのものに菌がいる」という状況が、特に家庭で起こりやすいということです。
どう調べたか
この研究では、温水洗浄便座が衛生維持や、便秘・痔の予防改善に役立つ便利な機器である一方で、使ううえでの問題点を確かめることを目的としました。
具体的には、洗浄便座から出る洗浄水そのものに含まれる菌を調べると同時に、排便後の洗浄でしぶき(飛沫)を介して、お尻まわりや陰部に便由来の菌が付着しないかを調査しました。家庭用と公共施設用の便座を比べたことで、前述の「約3倍」という差が浮かび上がってきました。
ただし、冷静に——菌がいる=病気ではない
ここからが大切なところです。「菌がいた」と聞くと不安になりますが、菌が存在すること自体が、ただちに病気を意味するわけではありません。
私たちの皮膚も腸も、もともと無数の菌と共に暮らしています。水の中に菌がいるのは、実はそれほど特別なことではありません。健康な人の多くにとって、この程度の菌で体調を崩すことは考えにくいというのが冷静な見方です。
注意したいのは、免疫が弱っている人や、お尻まわりに傷や炎症がある人です。こうしたケースでは、ふだんなら問題にならない菌が影響することもあります。要は「全員が怖がる話」ではなく、「気をつけたほうがよい人がいる」という話です。
それでも、今日からできること
過度に怖がる必要はありませんが、ちょっとした手入れで気持ちよく使えます。
- ノズルを定期的に清掃する:多くの機種にノズル洗浄ボタンやノズルの引き出し機能があります。週に一度など、習慣にすると安心です。
- 使い始めに数秒、水を流す:長く使っていなかったときは、最初の水を捨てるつもりで少し流すと、とどまっていた水が入れ替わります。
- 定期的なメンテナンス:取扱説明書に沿って、タンクやフィルター周りの手入れ・点検を行いましょう。
- 弱っている人への配慮:体調がすぐれない家族がいるときは、清掃の頻度を上げる、必要なら使用を控えるなどの工夫を。
便利な道具は、少しの手入れでもっと頼れる味方になります。今日の帰り、ノズル洗浄ボタンを一度押してみるところから始めてみませんか。
出典:Katano H et al., 「A survey on bacterial contamination of lavage water in electric warm-water lavage toilet seats and of the gluteal cleft after lavage」, J UOEH 2014(DOI)。Based on an article retrieved from PubMed.
※この記事は一般的な情報提供であり、医療助言ではありません。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。