2026年6月17日 (水)
医学トリビア研究所Medical Trivia Lab
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健康・医療

おしりを洗いすぎると便がもれる? ウォシュレットをやめたら改善した研究

便もれに悩む人がウォシュレットを一時やめたら、症状が大きく改善。便もれのある人の割合が88%から59%に減った日本発の研究を、やさしく解説します。

おしりを洗いすぎると便がもれる? ウォシュレットをやめたら改善した研究

① 「清潔のため」が、逆効果かもしれない

トイレのたびにウォシュレットでおしりを洗う。日本ではすっかりあたりまえの習慣になりました。でも、もしその「清潔のための習慣」が、おしりのトラブルの原因になっているとしたら——。

日本のお医者さんが、便がもれてしまう(便失禁)患者さんを調べた研究があります。その結果、ウォシュレットを一時的にやめてもらったら、便もれのある人の割合が88%から59%にまで減ったのです。「洗いすぎ」が、おしりの力を弱めていたのかもしれません。

② どうして「洗いすぎ」がいけないの?

おしりや肛門のまわりの皮ふは、とてもデリケートです。表面には、皮脂(ひし)という油の膜と、常在菌(じょうざいきん)という体を守ってくれる菌がいて、皮ふをバリアのように守っています。

ところが、強い水で何度も、長い時間洗いすぎると、この油の膜や菌まで一緒に流れてしまうと考えられています。バリアがなくなった皮ふは、かゆくなったり、荒れたりしやすくなります。すると人はもっと洗いたくなる——そんな悪循環におちいることもあります。

さらに、洗いすぎによる刺激が、肛門のまわりの感覚や、しめる力にも影響している可能性が指摘されています。つまり「キレイにしているつもり」が、かえっておしりの調子をくずしてしまうかもしれない、というわけです。

③ 何がわかったの?

研究でわかったことを、数字でまとめます。

  • 便もれに悩む患者さん53人(ふだんから電動ビデでおしりを洗う習慣がある人たち)が対象。
  • ビデの使用をやめてもらい、その前後をくらべた。
  • そのうち49人(92%)が追跡でき、中央値で約4週間後にもう一度しらべた。
  • 便もれの重さをはかるスコア(FISI)が、15点から10点へと有意に改善した(点数が低いほど良い)。
  • 便もれがある人の割合は、88%から59%へと減少した。

短い期間で、これだけはっきりと数字が動いたのは注目に値します。

④ どうやって調べたの?

これは2019年6月から2020年9月にかけて、ある医療機関で行われた後ろ向き(あとから記録を見返す)研究です。

まず、参加者にアンケートで「ふだんどのくらいビデを使っているか」を点数化(ビデ使用スコア)しました。そのうえで、次の診察までビデの使用をやめるよう指示し、便もれの重さ(FISIスコア)が前後でどう変わったかを比較したのです。

なお、肛門をしめる力が強い人や、痔の手術歴・直腸の病気などがない人ほど改善しやすい傾向もみられました。

⑤ ただし、冷静に読みましょう

この研究には、知っておくべき限界があります。

  • 53人という小規模な研究で、しかも記録をあとから見返す後ろ向きの方法です。本当にビデが原因だと断定するには、もっと大きな研究が必要です。
  • 興味深いことに、「ビデの使用量」と「改善の度合い」は、はっきりとは相関しませんでした。たくさん洗っていた人ほど大きく改善した、という単純な関係ではなかったのです。
  • そして何より大切なのは、ウォシュレット自体が悪者ではないということ。多くの人にとって快適で、痔の手術後のケアなどでは役立つ場面もあります。問題なのは、あくまで「洗いすぎ」かもしれない、という点です。

⑥ それでも、すぐできること

むずかしく考える必要はありません。今日から試せるのは、こんなことです。

  • 水の勢いは弱めに、当てる時間は短めに。「ついで」に長く当て続けないこと。
  • 1回ごとに念入りに洗うのではなく、さっと流す程度で十分なことが多いと心得る。
  • もし便もれやかゆみ、皮ふの荒れが気になるなら、しばらく使用を控えて様子を見るのもひとつの方法です。
  • そして、症状が続くときは自己判断せず、肛門科などの専門医に相談しましょう。

「もっとキレイに」と力を入れるより、ほどほどに——。おしりのバリアを守ることが、結果的に快適につながるのかもしれません。


出典:Tsunoda A, Kusanagi H. "A Retrospective Investigation on Electric Bidet Use as a Possible Cause of Anal Incontinence." *J Anus Rectum Colon* 2021;5(3):268-273. DOI: 10.23922/jarc.2020-092(PubMedより取得)

※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。症状については医師にご相談ください。

SOURCE / 出典・論文情報
Tsunoda A, Kusanagi H. J Anus Rectum Colon 2021;5(3):268-273. / DOI: 10.23922/jarc.2020-092
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