おしりを洗いすぎると便がもれる? ウォシュレットをやめたら改善した研究
便もれに悩む人がウォシュレットを一時やめたら、症状が大きく改善。便もれのある人の割合が88%から59%に減った日本発の研究を、やさしく解説します。
① 「清潔のため」が、逆効果かもしれない
トイレのたびにウォシュレットでおしりを洗う。日本ではすっかりあたりまえの習慣になりました。でも、もしその「清潔のための習慣」が、おしりのトラブルの原因になっているとしたら——。
日本のお医者さんが、便がもれてしまう(便失禁)患者さんを調べた研究があります。その結果、ウォシュレットを一時的にやめてもらったら、便もれのある人の割合が88%から59%にまで減ったのです。「洗いすぎ」が、おしりの力を弱めていたのかもしれません。
② どうして「洗いすぎ」がいけないの?
おしりや肛門のまわりの皮ふは、とてもデリケートです。表面には、皮脂(ひし)という油の膜と、常在菌(じょうざいきん)という体を守ってくれる菌がいて、皮ふをバリアのように守っています。
ところが、強い水で何度も、長い時間洗いすぎると、この油の膜や菌まで一緒に流れてしまうと考えられています。バリアがなくなった皮ふは、かゆくなったり、荒れたりしやすくなります。すると人はもっと洗いたくなる——そんな悪循環におちいることもあります。
さらに、洗いすぎによる刺激が、肛門のまわりの感覚や、しめる力にも影響している可能性が指摘されています。つまり「キレイにしているつもり」が、かえっておしりの調子をくずしてしまうかもしれない、というわけです。
③ 何がわかったの?
研究でわかったことを、数字でまとめます。
- 便もれに悩む患者さん53人(ふだんから電動ビデでおしりを洗う習慣がある人たち)が対象。
- ビデの使用をやめてもらい、その前後をくらべた。
- そのうち49人(92%)が追跡でき、中央値で約4週間後にもう一度しらべた。
- 便もれの重さをはかるスコア(FISI)が、15点から10点へと有意に改善した(点数が低いほど良い)。
- 便もれがある人の割合は、88%から59%へと減少した。
短い期間で、これだけはっきりと数字が動いたのは注目に値します。
④ どうやって調べたの?
これは2019年6月から2020年9月にかけて、ある医療機関で行われた後ろ向き(あとから記録を見返す)研究です。
まず、参加者にアンケートで「ふだんどのくらいビデを使っているか」を点数化(ビデ使用スコア)しました。そのうえで、次の診察までビデの使用をやめるよう指示し、便もれの重さ(FISIスコア)が前後でどう変わったかを比較したのです。
なお、肛門をしめる力が強い人や、痔の手術歴・直腸の病気などがない人ほど改善しやすい傾向もみられました。
⑤ ただし、冷静に読みましょう
この研究には、知っておくべき限界があります。
- 53人という小規模な研究で、しかも記録をあとから見返す後ろ向きの方法です。本当にビデが原因だと断定するには、もっと大きな研究が必要です。
- 興味深いことに、「ビデの使用量」と「改善の度合い」は、はっきりとは相関しませんでした。たくさん洗っていた人ほど大きく改善した、という単純な関係ではなかったのです。
- そして何より大切なのは、ウォシュレット自体が悪者ではないということ。多くの人にとって快適で、痔の手術後のケアなどでは役立つ場面もあります。問題なのは、あくまで「洗いすぎ」かもしれない、という点です。
⑥ それでも、すぐできること
むずかしく考える必要はありません。今日から試せるのは、こんなことです。
- 水の勢いは弱めに、当てる時間は短めに。「ついで」に長く当て続けないこと。
- 1回ごとに念入りに洗うのではなく、さっと流す程度で十分なことが多いと心得る。
- もし便もれやかゆみ、皮ふの荒れが気になるなら、しばらく使用を控えて様子を見るのもひとつの方法です。
- そして、症状が続くときは自己判断せず、肛門科などの専門医に相談しましょう。
「もっとキレイに」と力を入れるより、ほどほどに——。おしりのバリアを守ることが、結果的に快適につながるのかもしれません。
出典:Tsunoda A, Kusanagi H. "A Retrospective Investigation on Electric Bidet Use as a Possible Cause of Anal Incontinence." *J Anus Rectum Colon* 2021;5(3):268-273. DOI: 10.23922/jarc.2020-092(PubMedより取得)
※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。症状については医師にご相談ください。