2026年6月17日 (水)
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スポーツ医学

【W杯】断食中の筋トレ、いつやれば効く?“断食明け”が筋力に有利

ラマダンの断食中、筋トレは空腹時と断食明けのどちらが効く?男性40人のRCTでは筋肉量は両群で維持され、最大挙上重量は食後群で有意に伸びた。

【W杯】断食中の筋トレ、いつやれば効く?“断食明け”が筋力に有利

「食べていないときに鍛えたほうが脂肪が燃えそう」「いや、エネルギー切れで力が出ないのでは」——断食と筋トレのタイミングは、長く議論されてきたテーマです。とくにイスラム圏では、日中の飲食を控えるラマダン月のあいだも、選手やトレーニーは筋肉を落とさないよう運動を続けます。では、同じ1か月のトレーニングでも、空腹のまま鍛えるのと断食明け(食後)に鍛えるのとでは、結果に差が出るのでしょうか。チュニジアの研究チームが、健康な男性40人を対象にこの問いを正面から比べました。

なぜ“食後”が有利になりうるのか

筋トレの主役は、瞬間的に大きな力を出す「速筋」です。ここが頼りにするのは、糖(グリコーゲン)を素早く分解して得るエネルギー。空腹で長時間が経つと体内の糖の蓄えは目減りし、高重量を挙げる場面でいざというときの“出力の余力”が削られやすくなります。

さらに、筋肉づくりにはタンパク質とインスリンの後押しも効きます。食事をとった直後は血中にアミノ酸が満ち、合成のスイッチが入りやすい状態。逆に空腹のままだと、トレーニングで壊れた筋肉を立て直す材料が手薄になりがちです。理屈のうえでは、「食べてから鍛える」ほうが力を出しやすく、回復も進みやすい——この仮説を、実際のラマダン下で検証したのが今回の試験です。

何がわかったか

  • 4週間後、最大挙上重量(1回だけ挙げられる重さ=1RM)が有意に伸びたのは食後群だけでした。
  • 食後群はラマダン29日目の時点で、スクワット(P=.02、効果量0.21)とデッドリフト(P=.03、効果量0.24)が開始前より有意に向上。
  • 一方、空腹群では1RMに有意な変化は見られませんでした。
  • 筋肉の太さ(超音波で測った太ももと上腕二頭筋の断面積)は、両群とも維持され、どちらかが減るということはありませんでした。
  • つまり「断食中の筋トレは筋肉を落とさない」が大前提。そのうえで、力の伸びは食後に軍配——というのが要点です。

どう調べたか

研究チームは健康な男性40人を、くじ引きのように2群(各20人)へ振り分けました。片方は日没前の空腹状態で、もう片方は断食明けの夜=食後状態で、それぞれ全身の筋トレを行います。メニューは両群そろえて週4日、重さは1RMの75〜85%12回×3〜4セットという、しっかり負荷のかかる内容です。

測定は、最大挙上重量(スクワット・デッドリフト・ベンチプレス)と、超音波による筋断面積。これらをラマダン開始24時間前/15日目/29日目/終了21日後の計4回チェックし、変化を追いました。条件をそろえてタイミングだけを変えたランダム化比較試験(RCT)なので、「いつ鍛えるか」の効果を比較的フェアに見られる設計です。

ただし、冷静に

期待を持たせる結果ですが、線引きは必要です。第一に、対象は男性のみ。女性や、競技レベルの選手、高齢者に同じことが言えるかは未確認です。第二に、観察期間はラマダンの約1か月という短期で、長く続けたときに差が広がるのか縮むのかは分かりません。

そして最も大切な点として、差が出たのは“筋力の伸び”であって、筋肉量はどちらの群でも維持された、という事実です。「空腹で鍛えると筋肉が減る」ことを示した研究ではありません。効果量も0.2前後と控えめで、劇的な差というより“食後にやや分がある”という温度感で受け止めるのが妥当でしょう。

それでも、実践に活きるのは

ここから持ち帰れるのは、シンプルな順序の知恵です。最大筋力をぐっと伸ばしたい時期は、できるだけ食事のあとに高重量トレーニングを置く。断食中に限らず、朝の空腹時に高重量を扱うより、何か口にしてエネルギーとタンパク質を入れてから挙げたほうが、力は出しやすいというわけです。

逆に、スケジュールの都合で空腹時しか時間が取れなくても、悲観する必要はありません。筋肉量は維持できるのですから、「鍛えないより、空腹でも鍛えるほうがずっといい」。タイミングは“最後の上積み”として効くもの、と考えれば気が楽です。ラマダンのように生活リズムが変わる時期こそ、無理に空腹で追い込まず、食後の枠を活かす——それが今回の小さな実験が教えてくれる、現実的な一手です。


出典:Triki R, et al. Timing of Resistance Training During Ramadan Fasting and Its Effects on Muscle Strength and Hypertrophy. *Int J Sports Physiol Perform.* 2023;18(6):579-589.(PubMedより/DOI

※この記事は研究の紹介であり、医療助言ではありません。

SOURCE / 出典・論文情報
Triki et al, Int J Sports Physiol Perform 2023 / DOI: 10.1123/ijspp.2022-0268
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