2026年6月19日 (金)
医学トリビア研究所Medical Trivia Lab
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スポーツ医学

大谷を止めるのは、肘でも肩でもなく“豆”?

MLB投手の“指の豆”をレビューした論文。2010年以降、6投手が豆で計151日も離脱。原因はボールの縫い目と指先の摩擦で、リリース直前に指は約100Nでボールを押す。

大谷を止めるのは、肘でも肩でもなく“豆”?

“たかが水ぶくれ”が、エースを止める

投手の故障といえば、肘や肩を思い浮かべます。ところが、剛速球を投げる投手を悩ませるのは、指先にできる小さな「豆(摩擦性水疱)」だったりします。しかもこの“豆”、MLBではそれだけで整形外科のレビュー論文になっているほど、地味に深刻なテーマです。

何がわかったのか

MLB投手の手指の摩擦性水疱をまとめた論文(McNamara 2016)の主なポイントです。

  • 豆は、ボールの縫い目と、投球側の示指・中指の先端が反復してこすれて起きる
  • 2010年以降、MLBの6投手が“豆”で計7回・合計151日も故障者リスト入り
  • マイナーでも2012年以降に8選手が豆で離脱

「たかが豆」と侮れない、れっきとした離脱要因なのです。

なぜ、そんなに豆ができるのか

カギは、投球時に指先にかかるとんでもない力です。ボールにセンサーを埋め込んで測った別の研究(Kinoshita 2017)では、リリース直前に示指と中指がボールに加えるせん断力は合わせて約100N(約102N)に達していました。これはボールに強烈なバックスピンをかける力の源であり、同時に指先の皮膚が縫い目で削られる原因でもあります。

つまり、速い球・よく曲がる球を投げるほど、指先は激しくこすられる。豆は、いわば剛速球の宿命なのです。指先のケアやテーピング、投球数の管理が、地味だけれど重要になります。

ただし、冷静に受け止めたい

豆のできやすさは、投球数やボール・気候・個人の皮膚など、さまざまな条件で変わります。離脱日数はMLBの一部事例を集計したもので、すべての投手に当てはまるわけではありません。

それでも、「160キロの剛速球を投げる超一流を止めるのが、指先の小さな水ぶくれかもしれない」という事実は、スポーツの奥深さを感じさせます。


*出典:McNamara et al, Am J Orthop, 2016(PMID 26991565)/ Kinoshita et al, "Finger forces in fastball baseball pitching." Hum Mov Sci, 2017. 本記事は研究の紹介であり、医療アドバイスではありません。*

SOURCE / 出典・論文情報
McNamara et al, Am J Orthop 2016 / Kinoshita et al, Hum Mov Sci 2017 / DOI: 10.1016/j.humov.2017.04.007
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