飼い犬は、息のにおいで肺がんを当てられる?
ふつうの飼い犬5匹を訓練し、息のにおいだけで二重盲検でがんを判定。肺がんは感度・特異度ともに99%、乳がんも高精度だった。少人数のパイロット研究。
鼻のいい相棒が、がんを嗅ぎ分ける?
犬の嗅覚は人間の数千〜数万倍ともいわれます。その鼻で、がんを「におい」で見分けられるのか――そんな大胆な問いに挑んだ研究があります。
驚くことに、訓練したのは特別な検査犬ではなく、ふつうの飼い犬5匹。それでも、息のにおいだけでがんの有無をかなりの精度で当てたのです。
何がわかったのか
患者と健常者の呼気サンプルを使い、犬に「がんのにおい」を嗅ぎ分けさせる二重盲検(誰が患者か犬も人も知らない条件)の実験です。対象は肺がん55人、乳がん31人、健常な対照83人。
- 肺がん:感度99%・特異度99%
- 乳がん:感度88%・特異度98%
- 初めて嗅ぐサンプルでも高い精度を維持
感度=がんの人をがんと当てる力、特異度=健康な人を健康と当てる力。どちらも非常に高く、犬が呼気の中の「がんに特有の何か」を捉えている可能性を示しました。
なぜ犬がにおいで分かるの?
がん細胞は正常な細胞とは代謝が異なり、特有の揮発性有機化合物(VOC)を作ると考えられています。それが血液から肺へ、そして呼気に乗って出てくる――犬はその微量なにおいを嗅ぎ取っているのではないか、というわけです。
この発想は、「におい物質を機械で検出してがんを早期発見する」という研究(電子の鼻など)にもつながっています。
ただし、冷静に受け止めたい
これは少人数の探索的なパイロット研究です。犬の体調や訓練、実験条件によって再現性は変わりうるもので、その後の研究では精度がばらつく報告もあります。医師の診断や検査を置き換えるものではありません。
また、犬が具体的にどの化学物質を嗅いでいるのかは、まだ完全には解明されていません。とはいえ「がんにはにおいがある」という手がかりは、新しい検査法のヒントとして今も研究が続いています。相棒の鼻、あなどれません。
*出典:McCulloch et al, "Diagnostic accuracy of canine scent detection in early- and late-stage lung and breast cancers." Integrative Cancer Therapies, 2006.*
*本記事は研究の紹介であり、医療アドバイスではありません。健康上の判断は専門家にご相談ください。*