【W杯】妊娠後期に毎日デーツ6個でお産がラクに?チュニジアの食文化にちなんで
出産前4週間、毎日デーツ6個を食べた妊婦は子宮口の開きが進み、自然な陣痛が来やすく促進剤も少なめ。チュニジアの食文化にちなんだ意外な研究を紹介します。
砂漠が育てた「神様の果実」
ワールドカップに合わせて世界の食文化をめぐる連載。今回は北アフリカ・チュニジアにも縁の深いデーツ(ナツメヤシの実)です。砂漠地帯の貴重な栄養源として、中東から北アフリカにかけて何千年も食べ継がれてきました。
ねっとりと濃い甘さで、ラマダンの断食明けにまず口にする食べ物としても知られています。そんなデーツには、古くから「お産を軽くする」という言い伝えがあります。ただの民間の知恵なのか、それとも本当に体に効いているのか。ヨルダンの研究チームが、まじめに調べてみました。
なぜ「お産」に効くと言われるのか
デーツがお産に関わる、というのは少し不思議に聞こえます。研究者が注目したのは、デーツに含まれる糖分や、子宮の収縮に関わると考えられている成分です。
陣痛とは、要するに子宮の筋肉が規則正しく縮むこと。デーツに含まれる天然の糖はすぐエネルギーになり、長丁場のお産でスタミナを支えます。さらに、子宮を収縮させるホルモン(オキシトシン)に似た働きをする物質が含まれている可能性が指摘されてきました。「もしかすると、体を自然な陣痛に向かわせる後押しになるのでは?」——これが今回の仮説です。
何がわかったか
出産予定日の4週間前から毎日デーツ6個を食べたグループと、まったく食べなかったグループを比べた結果、はっきりした差が出ました。
- 入院時の子宮口の開き:デーツ群は平均3.52cm、食べない群は2.02cm(つまり、来院した時点ですでにお産が進んでいた)
- 自然に陣痛が来た割合:デーツ群96% 対 食べない群79%
- 陣痛促進剤(プロスチン/オキシトシン)を使った割合:デーツ群28% 対 食べない群47%
- 陣痛の「潜伏期」(お産の初期段階)の長さ:デーツ群平均510分 対 食べない群906分と、約4割短かった
数字だけ見ると、デーツを食べた人のほうが「自然に、スムーズに」お産が始まっている印象です。
どう調べたか
研究はヨルダン科学技術大学で、2007年2月から1年間かけて行われました。デーツを食べた妊婦69人と、食べなかった45人を追跡した観察研究です。
大事なのは、2つのグループで妊娠週数・年齢・出産経験の回数に大きな差がなかったこと。条件をそろえたうえで比べているので、「もともとお産が軽そうな人ばかり集めた」わけではない、という配慮はされています。
ただし、冷静に
うれしい結果ですが、鵜呑みにするのは早すぎます。
まず、参加者は合わせて114人と少なめで、しかも「食べる/食べない」を本人に選んでもらった観察研究です。クジで割り振る厳密な試験(ランダム化比較試験)ではないため、結果に別の要因が紛れ込んでいる可能性は残ります。実際、最終的なお産そのものの良し悪しでは、統計的にはっきりした差は出ませんでした。論文自身も「きちんとした比較試験での確認が必要」と結んでいます。
そしてデーツは糖分が多い食べ物です。妊娠糖尿病や血糖が高めの妊婦さんが自己判断で毎日6個も食べるのは禁物。必ず主治医に相談してください。
それでも面白いのは
「砂漠の果実がお産を後押しする」という言い伝えに、現代の医学が一部とはいえ数字で応えた——ここが何ともロマンを感じる点です。
食文化の知恵が、まるごと迷信というわけでもない。チュニジアのスタジアムでデーツをほおばる人を見かけたら、その甘い実が長い歴史の中で人々の暮らしをどう支えてきたか、少し想像してみてください。
出典:Al-Kuran O, et al. *The effect of late pregnancy consumption of date fruit on labour and delivery.* J Obstet Gynaecol. 2011;31(1):29-31. DOI(PubMedより取得)
※この記事は医療助言ではありません。妊娠中の食事については必ず主治医にご相談ください。