毎日コップ2杯の「ラクダの乳」で、1型糖尿病のインスリンが2年で“半分”になった
インドの2年間のRCTで、毎日500mLのラクダの乳を足した1型糖尿病患者はインスリンがほぼ半減、12人中3人は不要に。砂漠の食文化の一杯を平易に解説。
砂漠の民が古くから飲んできた、ラクダのミルク。その一杯が、糖尿病の治療を変えるかもしれない——そんな研究があります。インドの医療チームが1型糖尿病の患者を2年間にわたって追いかけたところ、毎日ラクダの乳を飲んだグループでは、必要なインスリンの量がほぼ半分にまで減っていたというのです。
1型糖尿病の人にとって、インスリンの注射は毎日欠かせない命綱です。その量が「半分になる」というのは、想像以上に大きな出来事。いったい、ただの“乳”に何が起きていたのでしょうか。
なぜ「ラクダの乳」なのか
牛の乳との一番の違いは、胃の中での振る舞いだと考えられています。牛乳に含まれるたんぱく質は、胃酸に触れるとすぐに固まってしまいます。ところがラクダの乳のたんぱく質は酸性の環境でも固まりにくく、しかもその中には「インスリンによく似た働きをする成分」が含まれている、と以前から指摘されてきました。
固まらずに腸まで届けば、その成分が壊されずに吸収される——あくまで仮説ですが、これがラクダの乳と血糖値を結びつける、もっとも有力なストーリーとして語られています。砂漠という過酷な環境で生き抜くために、ラクダの乳が特別な性質を持つようになったのだとしたら、なんともロマンのある話です。
2年間でわかったこと
研究チームは、1型糖尿病の患者にいつもの治療(食事・運動・インスリン)を続けてもらいながら、片方のグループにだけ毎日500ミリリットル、コップ2杯ほどのラクダの乳を加えました。そして2年後、ラクダの乳を飲んだグループでは——
- 1日のインスリン量が 32.5単位 → 17.5単位 へ、ほぼ半減
- 長期の血糖の指標であるHbA1cが 7.8% → 5.4% へと改善
- 12人のうち 3人は、インスリンがまったくいらなくなった
という変化が起きていました。一方、いつもの治療だけを続けたグループでは、こうした変化は見られません。さらに、体がインスリンを敵とみなす「抗インスリン抗体」は増えておらず、安全性の面でも問題は見られなかったといいます。
どうやって調べたのか
対象は、1型糖尿病の患者24人。くじ引きのようにランダムに2つのグループへ分け、2年間という長い期間、ていねいに追いかけました。毎週、血糖値を見ながらインスリンの量を細かく調整する、しっかりした設計です。「飲み物を一つ足しただけ」で、これだけの差がついたことになります。
ただし、ここは冷静に
夢のある話ですが、過信は禁物です。これは24人という小さな試験で、行われたのもインドの一施設。誰にでも同じ効果が出るとは限りません。
そして何より、ラクダの乳はインスリンの「代わり」ではなく、あくまで「補助」です。自己判断でインスリンをやめるのは、命に関わる危険な行為です。気になる人は、必ず主治医に相談してください。「インスリンに似た成分が効いている」という仕組みも、まだ完全には証明されていません。
それでも面白いのは
ラクダの乳は、サハラ砂漠を抱えるチュニジアをはじめ、北アフリカや中東の食文化に深く根づいた飲み物です。厳しい環境で人々の健康を支えてきた一杯に、現代の医学がようやく追いつこうとしている——そう考えると、私たちの台所や食卓の中にこそ、まだ解き明かされていない“薬”のヒントが眠っているのかもしれません。
出典:Agrawal RP, et al. *Effect of camel milk on glycemic control and insulin requirement in patients with type 1 diabetes: 2-years randomized controlled trial.* Eur J Clin Nutr. 2011;65(9):1048-52.(PubMedより/DOI)※本記事は研究の紹介であり、医療上の助言ではありません。治療の判断は必ず専門家にご相談ください。